徴用工問題における日本人の5つの勘違い

徴用工問題は日本社会では韓国が悪いと98%は韓国司法の判決を批判している。しかし、ネット情報を見る限り正しい認識のもと韓国を批判している人は少ない。

 

そこでこのブログでは日本おける徴用工に対しての5つの勘違いを上げ、正しい認識を説明したい。

 

目次

1.徴用工ではなく募集工(徴用工は存在しない)という勘違い

2.強制連行・強制労働は存在しないという勘違い

3.日本は賠償金を支払ったという勘違い

4.請求権は存在しないという勘違い

5.日韓条約により個人は救済されない勘違い

 

1.徴用工ではなく募集工(徴用工は存在しない)という勘違い

まずここからの勘違いをされるかたが多いのだが、国民徴用令により終戦前の11か月間は朝鮮人にも徴用が適用されていた。一方、朝鮮人の募集工はそれ以前から存在したため戦前の朝鮮人労働者がマジョリティであると推測されるが、しかし、期間限定とはいえ徴用工が存在したことは事実であり。これは事実であると認識しなければならない。

 

一方で募集工だから問題がなかったというのもありえないロジックだ。

 

募集工で問題がないのであれば、現在の日本社会におけるブラック企業は全員が自らの意思で応募した労働者であり、ブラック企業問題は存在しなくなる。募集工であっても、どのような労働環境で働かされたのかが重要だ。

 

これを裏付ける一つの事件に「信濃川逃亡労働者殺人事件」が存在する。1922年に信越電力会社の工事業者から逃げ出した十数人の労働者が虐殺されたという痛ましい事件だが、この虐殺された労働者の中には朝鮮人も存在していた。 彼らが働いていた労働環境はタコ部屋と言われ、長時間労働に加え体罰も加えられる強制労働が行われ、当時の日本に過酷かつ非人道的な労働問題が存在していたのだ。

 

訴訟を出している人が、募集工であったとしても強制労働であったかどうか別の話なのだ。

 

2.強制連行・強制労働は存在しないという勘違い

これに関しては不二越強制労働損害賠償裁判「(平成19ネ)150」を見てみよう。

下記(http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=80137)を参照

 

2-1.概要(引用)

第二次世界大戦中に朝鮮半島から女子勤労挺身隊の募集又は徴用により来日し,労働に従事した女子勤労挺身隊員又はその遺族及び徴用工である控訴人らが,被控訴人らにより強制連行され,強制労働させられたとして,被控訴人らに損害賠償と謝罪広告の掲載を求めたのに対し,控訴人らの不法行為ないし被控訴人会社の債務不履行を理由とする請求権は,いずれもいわゆる日韓請求権協定によって裁判上訴求する権能を失ったとして,控訴人らの請求を棄却した原判決を維持した事例

 

2-2.事実認定(引用)

被控訴人らが,若年の本件勤労挺身隊員に対し,勉学の機会を保障するこ
とが極めて困難か絶望的な状況であるにもかかわらずこれが十分保障されて
いるかのように偽って,勤労挺身隊に勧誘し参加させたことに関しては,被
控訴人国の国家無答責の法理に係る主張は採用することができず,かつ,被
控訴人らの共同不法行為に該当するものというべきである。」

「前記前提事実のとおり,女子挺身隊制度強化方策要綱及び女子挺身勤労
令において,国民登録者以外の女子については,特に志願した者に限って
勤労挺身隊員とすることが認められていた。しかしながら,前記のとおり,
多くの本件勤労挺身隊員が12歳から16歳と若年であるにもかかわらず,
両親の明確な承諾がないまま勤労挺身隊に参加し,あるいは,両親の反対
や抗議を事実上受け付けられなかった例があり,中には被控訴人会社に行
かなければ母を慰安所に送るなどと脅されて勤労挺身隊へ参加した例も
あったことが認められる

「したがって,植民地支配を前提としても許されないような重大な国際法
上の人権侵害である本件強制連行・強制労働である本件において,被害者
である控訴人らの請求権に対して本件協定2条1及び3の請求権放棄条項
を適用することは,交渉経緯に即した「請求権」という用語の通常の解釈
からしても,到底許されないといえる。」

 

とこのように、高裁は明確に強制連行・強制労働を認めています。

 

確定した強制連行・強制労働の事実があったことがわかります。

もちろん私はすべての訴訟に強制連行・強制労働があったとは言いません。中には捏造や勘違いもあるでしょうが、当時の日本にそうした人権犯罪があったという事実は認めなければなりません。

 

3.日本は賠償金を支払ったという勘違い

協定を結ぶさいに支払った無償3億ドルを賠償金と解釈する人がおおいようです。

 

しかし実際には政府はこのように国会で答弁しています。

 

椎名悦三郎外相発言
「請求権が経済協力という形に変わったというような考え方を持ち、したがって、 経済協力というのは純然たる経済協力でなくて、 これは賠償の意味を持っておるものだというように解釈する人があるのでありますが、法律上は、何らこの間に関係はございません。あくまで有償・無償5億ドルのこの経済協力は、経済協力でありまして、韓国の経済が繁栄するように、そういう気持ちを持って、また、新しい国の出発を祝うという点において、 この経済協力を認めたのでございます」(第50回国会参議院本会議1965年11月19日)

 

これは賠償金ではなく独立祝い金として日本政府は支払ったという以上、これは賠償金ではありません。

 

反論1 外交文書

これに反論する内容として、外交文書において韓国側が補償を求めた記録ありとして、支払った経済協力は賠償金であると主張する人がいます。確かに韓国側がそのような主張をした記載があるは事実ですが、

 

一方で、日本側が慰謝料も含め支払うと合意した文書を私は確認していません。また仮にその内容で合意し支払ったのであれば、日本政府は慰謝料も含めた支払いを行ったと改めて声明を出すべきです。さらに言うならば、慰謝料を支払ったからには悪事を働いた人がいたことが事実であり、その事実究明に責任追及は同時に行うべきです。

 

私は日本政府の本音はそうした慰謝料も含めて「汲んでほしい」と日本流の暗黙の了解を求め支払ったのではないかと思いますが、そうした背景には大手や財閥の責任追及を回避したくそのような措置をとったのではないかと思います。

 

いずれにしろ、日本政府の現状の公式見解は賠償金は支払っていないです。

 

反論2 韓国政府が個人補償を行うと主張

2005年に韓国政府は外交文書をだし、個人補償救済の道義的責任は韓国政府にあると主張しましたが、これは財産権に関しての話であり、不当行為に対しての慰謝料はふくまれていません。

 

日弁連の資料の2次情報ですが、韓国政府の主張の資料があります。

https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/kokusai/humanrights_library/sengohosho/sonota_01.pdf

 

先日、韓国最高裁が出した判決も慰謝料に関してであり、経済的損失の賠償請求ではありませんでした。

 

賠償金も大きくは2種類あり、一つは経済的損失を請求する賠償金ともう一つは精神的苦痛を請求する慰謝料があります。韓国政府はあくまで経済的損失の個人補償を行うと主張しているのであり、慰謝料も含めて韓国政府が補償するというのは完全なミスリードになります。

 

 4.請求権は存在しないという勘違い

まず、請求権に関してですが、請求権をなくしたのはあくまで国であり個人の請求権は消滅していません。これは日韓共通の理解です。

 

なので「なんで請求するんだ、条約違反だ!」

 

はだめです。個人の請求権は生きているため、それは認めなければならない権利になります。

 

5.日韓条約により個人は救済されない勘違い

4に関連する話ですが、個人の請求権は認められている一方で、法では救済されない権利です。日韓請求権協定には

 

両締約国は、両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が、千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第四条(a)に規定されたものを含めて、完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する。

 

とあります。

 

ここの内容ですが韓国側は

 

「両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産、権利及び利益」並びに「両締約国及びその国民の間の(財産・権利・利益の)請求権」と解釈し

 

日本側は

 

「両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産、権利及び利益」並びに「両締約国及びその国民の間の(慰謝料含むすべての)請求権」

 

と解釈しています。

 

つまり、これをどう解釈するにより、対応は変わるべきです。事実上、日韓で解釈が分かれいます。

 

これに対して、一方的に韓国が協定違反と非難がありますが、解釈の違いはお互い様であり、日本は日本で一方的な解釈で請求を退けました。この理屈でいうなれば、日本も同様に「条約違反」と批判されなければなりません。

 

 まとめ

以上、徴用工に関する日本の5つの勘違いを説明させていただきました。

 

結局のところ、この問題は5番目で指摘した通り、両国の解釈が異なる点が一番大きな問題なのですが、2013年に実のところ日韓で協議が行われていました。この情報は産経新聞社によるものです(https://www.sankei.com/politics/news/131230/plt1312300007-n1.html)。

 

この会議では徴用工の韓国の裁判に関して、韓国司法が賠償請求をとった場合にどうなるかの協議でしたが、日本政府側の「和解に応じない」という内容は、韓国側からすれば事実上の協議決裂の内容であったのかもしれません。その後の協議に応じろと日本政府は主張しますが、すでご破談に終わった協議に改めて応じろと言っても、何かしら歩み寄れる点がない限り実現はしないでしょう。