池袋暴走事故における世論の暴走
池袋の暴走事故を引き金に、高齢者から運転免許を法的措置によりはく奪するべきという声が目立つ。遺族に被害者の無念さに同情する人情は理解できるが、しかし、一つの事例をもって高齢者から免許をはく奪せよは短気に過ぎる。
そこまで、まず本当に高齢者の事故が多いのかを調査してみました。
1)高齢者の事故実態調査
このグラフは平成29年に警察庁がまとめたものです
https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/seizou/supportcar/pdf/001_04_00.pdf
この統計でみる限り、確かに高齢者が死亡事故を発生させている率は前年齢層の中でも最も高く。やはり、高齢者に事故が多いということはデータとしては事実です。しかし、一方で16-24歳の若手の事故率も高齢社に次ぎ高い基準となっています。
一方で運転免許の保有者を見ると
16歳ー24歳:578万人
75歳以上: 447万人
参照:https://www.npa.go.jp/toukei/menkyo/index.htm
と16歳から24歳の年齢層のほうが免許の保有者数が多く、このことから率から事故発生件数をみますと
16歳ー24歳:439件
75歳以上: 429件
と、若いドライバーのほうが死亡事故を発生させている件数が多いことがわかります(年代があう資料が見つからず、免許者数の年と事故発生の年に差があることはご容赦を。これは推定値になります。)。
一件一件の事故は被害者にとっては辛いものであり、加害者に同情の余地がないことは私も共感いたします。しかし、報道の仕方としてどうも「高齢者ドライバー」は悪であるという風潮は、高齢者を社会から排除しようとしているように思えます。
報道の在り方として、前年齢層と比較し高齢者ドライバーは悪であるとするのは全体の事故状況を冷静に分析されていない報道の仕方だと思います。
2)日本の交通安全状況
ちなみに日本の交通安全状況ですが、高齢者ドライバーが増加しながらも全体の死亡事故発生件数は減少傾向にあります。
参照:https://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_soc_tyosa-jikokoutsu
さらに世界と比較した場合に、日本の交通安全状況は世界でトップクラスの水準にあります。この状況を見る限り、高齢者ドライバーのリスクは課題である一方、しかし日本の道路事情が高齢者のため危険であるという風潮にするのはミスリードになります。
すくなくとも、死亡事故減少を目的に取り組むなら件数が多い若いドライバーを改善対象の筆頭にすべきでしょう。
3)今後の交通事故の取り組み
私は現状、死亡事故が減少している現実と世界的に安全である交通実態をふまえ、社会的に高齢者ドライバーの運転免許制限を設けることが急務であるとは思えません。
高齢者から運転免許を取り上げることで、
・車に依存する高齢者の生存権に影響する
・車離れが進み国内経済がさらに冷え込む
・地方の過疎化が進む
という課題がでてきます。あえて、安全な状況が進む日本の車事情でかつ、これから景気が冷え込む日本が感情に流され高齢者から免許を取り上げることは愚策以外のなにものでもないでしょう。
とくに車に依存する高齢者の人権を考えるならば、車の安全性能の進化を促し、車社会に高齢者を共存させる策を議論するべきです。