タイ在住者が思うタイ経済の強さ

タイは東南アジアでは勝ち組といわれている。

 

実際に10年前と比較すれば、立派なデパートなど多く立ち並び物価も上昇した。バンコクの家賃などは日本と変わらない。さらにデパートの中では日本と変わらない物価の外食屋に来る家族連れのタイ人も珍しくはない。

 

格差社会はあるものの、タイが東南アジアにおける勝ち組といわれることは、現地で済みながら確かに実感できる。

 

GDPから見るタイ経済

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アジア危機・リーマンショック・洪水などで紆余曲折はあるものの、名目GDPは右肩上がりで成長し続け、経済成長率で日本と比較しても安定的に上回っていることがわかる。

 

ここからおそらく5%を超えるような経済発展は、すでにインフラが整いつつあるタイでは難しいだろうが、3-4%程度の安定した経済成長は見込まれている。

 

少子高齢化にタイの労働者不足の対応

タイでも少子高齢化が起きており、働き手不足が起きており企業の人の確保は大変だ。特に豊になってきたタイ人は3Kの仕事を嫌うようになり(つまり日本と同じ道を歩んでいる)、製造現場各社は人材管理が厳しいとどこも声をそろえて課題を挙げている。

 

そんな背景にあってタイを支えているのが、カンボジアなど近隣諸外国の労働者の存在だ。非合法な労働者も国が経済のため黙認しているところもあり、不足している労働事情を周辺諸外国の労働力が支えている。

 

さらに、単純労働に関しては省人機器の導入を積極的に行い労働不足をカバーする設備投資もさかんだ。日本でも省人機器の導入は盛んだが、それでも不足している労働力は主婦やシニア層の参入が支えてきた。

 

日本とタイの最大の違いは、タイでは人件費が高騰する中(人が豊になる中)での人不足からの省人化や海外労働力の活用である。それに対して日本では、平均賃金が下がり、かつ一人暮らし世帯が増加し、各世帯の生活が苦しいことから国内住民が労働者になっている。タイ国民と日本国民では労働環境に大きな違いがあるといえる。

 

日本では主婦層・シニア層の労働力の活用も進み、今後は人口減少の背景から労働人口減少が起きる。その対策から日本では海外労働者の受け入れに貪欲だが、島国の日本においては独特な習慣・言葉の壁はタイと比較し大きな障害になるだろう。

 

タイの強みは荷台に人を乗せて高速を走るなど、よくも悪くも細かいところにこだわらない点が、海外労働者の受け入れに自由に働いてる。何かと細かい日本では、ちょっとした違いでも敏感に反発されるため、タイのように海外労働者が活躍することは難しく期待はできない。

 

■自由気ままな労働者

タイで労働者の賃金が上がり続けている理由は、労働者不足という点もあるが、少しでも良い条件があれば労働者はさっさと新しい職場に移動してしまう。

 

日本では転職回数が多いと悪とみなされるが、こちらではそういった概念はない。むしろ、終身雇用制度がいまだに前提とされているかのような日本社会の概念が国際的には珍しい。個人的にはこの転職回数が多いと悪という概念は、労働市場の発展を阻害し賃金上昇を阻害している。

 

節操がないかのような流動的な労働市場は、終身雇用がいまだに継続している日本と異なり、むしろ労働者にとってプラスに働く。この考えをそのまま日本の労働市場に当てはめることはできないが、日本の賃金を上昇させるための一つのチップにはなるはずだ。

 

一方で課題もある。こうした関係の薄さは不景気に入ったときは企業のほうが力を強くなる。つまり、人余り時代のさいは諸刃の剣のごとく労働者に帰ってくる。特に人件費高騰から省人化設備導入が活発で、人不足から人あまりへと生産体制が変化する可能性がある。

 

タイ政府は省人化を推奨しているが、労働市場の動向を見誤り推奨し続ければ、タイ社会にとっては大きなマイナスになるだろう。

 

■ビジネスチャレンジ精神

タイでは屋台含めて個人店が多いが、日本に比べて自分でビジネスをやるという人が多い。知り合いのタイ人も企業し今では結構成功している(うらやましい)。露店など小さな店を含め、自分でビジネスをやるのが普通な環境は、リスクを恐れ自分でビジネスをしない。つまり投資をしないという日本との大きく異なる点だろう。

 

また、こうした多くの個人店は日本の昔の商店街にもあった人の活気が凄く、街が非常ににぎわう。面白いのはタイではセブンイレブンなど新しい小売りと、屋台といった伝統的な個人店が両立できている。

 

日本では逆に個人店が大手に敗北したり、衛生面から出店を出す規制が強くなりすぎ、画一的なものしか世の中に出回っていない。

 

タイを見習い社会の発展を促すためには、個人店を出しやすくする環境が日本には必要だ。自分の店を持ちやすくする風土と、ビジネスチャレンジしにくくする風土。どちらがよい投資が生まれやすく経済発展しやすいかは比較するまでもないことだろう。